トップページ

自立準備ホームとは

<概要>

生活基盤が整わないまま再犯を繰り返す人の社会復帰支援が課題となる中、これまで更生保護施設に限定されてきた、行き場のない刑務所出所者等の受け入れ先を多様化するという観点から、平成23(2011)年度から、宿泊場所を管理するNPO法人や社会福祉法人等に対して、国が宿泊場所、食事の提供及び毎日の自立準備支援を委託する新たな取組が始まりました。この取組によって設けられた施設が「自立準備ホーム」です。

更生保護施設には、一定の設置基準や処遇基準がありますが、多様な事業者が参加できるよう、自立準備ホームについては更生保護施設並みの基準を設けず、①法人格を有していること、②暴力団等反社会性のある団体又は個人との関係がないこと、③経営が安定しており、事業が確実に実施できること、④関係法令の違反がなく、事業運営について社会的信望を有すること、⑤保護観察や更生緊急保護の意義や内容を十分理解していること、⑥個人情報を適切に管理していること、のいずれの要件をも満たしている法人等が担うこととなっています。

受託事業を実施することを希望する場合には、事業者は、自立準備ホームの所在地を管轄する保護観察所に登録希望書を提出します。保護観察所は、上記要件を満たし、かつ、地域の実情等を総合的に勘案し、必要と認める場合に、当該法人等を登録します。登録は、各年度毎に更新の手続を行うこととなっています。

<制度>

刑務所等の出所者の中には、帰住先が確保できないまま出所し、再犯に至る者が多数に上ります。また、帰住先がない者ほど矯正施設等への入所を繰り返し、再犯に至る期間が短いのが現実です。生活の基盤となる「住居」を確保することは、再犯防止を図る上で欠かすことができません。

これまで更生保護施設が中心となり、こういった行き場のない矯正施設等の出所者等について、国の委託を受けて収容保護し、社会生活に適応させるための生活指導等が行われていましたが、それでもなお行き場のない矯正施設等の退所者等が多数に上ることなどから、法務省では更生保護施設の受け入れ機能を強化するとともに、平成23(2011)年度から「緊急的住居確保・自立支援対策」による住居確保の施策を開始しました。

これは、あらかじめ保護観察所に登録されたNPO法人や社会福祉法人等が管理する施設の空きベッド等を活用して、保護が必要なケースについて、保護観察所から事業者に対して宿泊場所、食事の提供と共に、毎日の生活指導等を委託するものです。受託事業者は、保護観察所から委託を受けて、保護観察を受けている人や更生緊急保護の対象となる人に対して、宿泊場所や食事を提供し、自立のための支援をします。

参考:法務省保護局ウェブサイト「住居確保と就労支援」

<委託を受ける措置>

・宿泊場所を供与します。
・宿泊する居室や宿泊に必要な設備を提供します。
・自立準備支援を行います。
・入所者と毎日接触し、生活状況を確認した上で、規則正しい生活習慣、就労、住居確保、交友、金銭管理等の支援を行います。
・食事を提供します。 
・衛生的に調理され、健康の維持に必要な味覚豊かな食事を原則として1日3回提供します。

<委託を受けるまでの流れ>

刑務所、少年院収容中の人の場合
ア 保護観察所からの入所を検討する人に関する情報提供
イ 保護観察所と受入れに関する協議
ウ 保護観察所に「受入れ可」の回答
エ 保護観察所から「連絡書」を受理
オ 保護観察所から「適当日」の連絡
カ 保護観察所から「仮釈放等許可決定」の連絡

保護観察中、更生緊急保護の対象となる人の場合
ア 保護観察所からの入所を検討する人に関する情報提供
イ 保護観察所と受入れに関する協議
ウ 保護観察所に「受入れ可」の回答

<委託開始後>

・自立準備ホームは、改善更生に向けた通過点として活用されるものであり、いずれ退所し住居を確保して自立を目指すことが原則です。自立に向けた本人の計画を尊重しながら、支援に向けた計画的な取組が必要です。
・自立準備ホームが関係者の秘密を保持し、その名誉を尊重することは言うまでもありません。
・保護観察所からの受託事業であることから、受託事業の実施状況に関し定期的に報告する必要があります。また、保護観察所職員による実施状況の確認や入所者の保護等に関する指導、監督が行われます。

関係機関・団体との連携

・保護観察所を始め、地方更生保護委員会、法務省保護局等の更生保護関係機関のほか、刑務所出所者等の再犯防止、社会復帰支援を所管、あるいは関係する法務省、厚生労働省等の各機関と協働します。
・社会復帰支援を担う全国保護司連盟、全国更生保護法人連盟等の民間の更生保護関係団体と協働する。
・刑務所出所者等の息の長い支援を目指し、刑事司法関係機関・団体のほか、地方公共団体を始め、社会復帰支援に資する関係機関・団体と緊密な連携を推進します。

広報活動

ホームページ、会報、リーフレットなどによる情報発信を行うことにより、会員施設への各種情報の提供とともに、協議会との連携及び課題の共有を図ることを目的としています。
会員間でも情報交換できる体制も整備し、運営における課題対策も行っています。
帰住先を求める人には、全国各地にある施設をホームページなどで閲覧できることにより、その人にあった場所や環境を認識でき、提案できるようにしてます。
 また、定期的に開催する講演会・シンポジウムや研修・勉強会などといった、最新の事業や行事等の案内や紹介も行っています。

人材育成・研修

対象者の日常生活の指導等を含めて、業務に必要とされる基本スキルや種々の対人支援スキルの習得は、適正な支援業務実施には不可欠ではあるものの、個別団体単位ではその実施が困難です。そこで、地方ブロックごとに初任者、施設管理者等の対象者別の研修等を企画・実施し、必要とされる人材育成等への協力を行なっていきます。
 これまでも、中京、関西、中国、北海道地区において研修会を実施し、各団体の実情やそれぞれの課題を共有してきています。

調査・研究

現実の現場で生じている様々な課題を明らかにし、その具体的方策を検討するための調査・研究を法学・福祉・人間科学等の専門家との共同により実施します。その結果等に関しては、実際の実務に還元できるよう、報告書を作成し公表するとともに研究報告会等を実施、その理解等の促進を図ります。更に、調査・研究の結果については政策提言等にも反映していく予定です。
 これまでも、全国の自立準備ホームに対しての実情調査や、全国の少年院における帰住調整等に関する課題調査を実施し、その結果については報告書を作成した他、シンポジウムや勉強会において報告してきています。

調査研究報告

①全国の自立準備ホームに対するアンケート調査結果
②全国の少年院に対する帰住調整困難事例に関するアンケート調査

〇研究論文・文献、参考資料
・犯罪白書:令和2年版 https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00027.html
・再犯防止推進白書:令和2年版
 https://www.moj.go.jp/hisho/saihanboushi/hisho04_00009.html

代表理事挨拶

日本自立準備ホーム協議会
代表理事 髙坂 朝人

自立準備ホームに入居したことのある青年が話してくれたことがある。

刑務所での生活のことや、刑務所から出所したあとのことが不安で、毎日、泣いていた。
刑務所を出たあとに、帰る家がない、迎えにきてくれる人がいない、面会に来てくれる人も手紙をくれる人もいない。
自立準備ホームのことは、知らなかったし、聞いたことはなかった。
刑務所の職員から、自立準備ホームのことを教えてもらい、刑務所での受刑中に自立準備ホームに帰れることが決まり、安心した。
そして、刑務所出所後のことについて、前向きな気持ちになることができて、生活を頑張るようになった。

刑務所を出所するときに、帰る家が決まっていない人は、何人ぐらい?
令和2(2020)年の満期釈放者は、7,440人。その内、43.9%の人は、帰住先が「その他」となっている。
「その他」とは、帰住先が不明、暴力団関係者、刑終了後引き続き被告人として勾留、出入国在留管理庁への身柄引渡し等である。
43.9%に含まれている人たちは、どのような気持ちなのだろうか?
自立準備ホームに帰ることが決まる前の青年のように、前向きな気持ちになれていないのではないだろうかと思ってしまう。

少年院に行ったときに、少年院の法務教官から、帰住先が決まらなくて社会に帰ることができない少年がいることを聞いた。
少年院の本来の在院期間より、半年ほど過ぎているけど、社会復帰の目途がついていないと教えてもらい、強い悲しみと衝撃を受けた。

法務省矯正局、全国の少年院から協力を得て、全国再非行防止ネットワーク協議会が全国の少年院向けのアンケート調査を実施した。平成27年度~令和2年度の5年間で、全国の少年院を出院した人の内、帰住先の調整が難航して、在院期間が延びた人が168人いたことがわかった。

刑務所は、出所時に帰住先が不明の状態で出所してしまう課題がある。
少年院は、出院時に帰住先の調整が難航して在院期間が延びてしまう課題がある。

このような課題があるということは、自立準備ホームは、満床で不足しているのか?
令和3(2021)年4月1日現在の自立準備ホーム登録事業者数は、447事業者となっており、令和2(2020)年度の委託実人員は1,719人。全国の自立準備ホームの最大委託人数の半数以上が、自立準備ホームとして活用されていない現状がある。
そして、重大な課題が取り残されている。

そもそも、自立準備ホームは、誰が、どのようなときに、どのようにしたら活用することができるのか?
自立準備ホームは、自分の住んでいる県にどれだけの数があり、どの法人が運営しているのだろうか?
この内容は、自立準備ホームを必要としている人や、必要としている人を支援している人に、情報が届いていない。
自立準備ホームを運営している事業者であっても、制度の活用方法や、他の自立準備ホームの事業者名などは具体的に公表されていないため、わかっていないことが多く、手探り状態での運営が続いている。
まずは、自立準備ホーム事業者が正確な情報を得て、自立準備ホームを必要としている人や、必要としている人を支援している人に、情報を届けていく必要がある。

1つの事業者では困難な荒波も、さまざまな事業者が1つにまとまることで荒波を乗り越えていくことができる。
そして、進むべき道に進むことができる。
令和4(2022)年3月21日は、1つずつの自立準備ホーム事業者が乗り込むことができ、それぞれの強みや特徴を生かし合うことのできる、船のような、日本自立準備ホーム協議会の誕生の日。
誕生の日の時点で、日本自立準備ホーム協議会に乗り込んでくれることを表明してくれている自立準備ホームの事業者数は40。
全国の登録事業者数の1割にも満たない数字だけど、さまざまな人たちと手を合わせて日本自立準備ホーム協議会の設立にこぎつけたことと、40事業者の仲間とスタート地点に立てたことは、忘れない。
進むべき道に進む旅が始まった。

自立準備ホームの制度は、平成23(2011)年度から開始した。
令和3(2021)年度は、自立準備ホームの制度が開始されてから10年が経過する節目。
平成23年3月31日現在の自立準備ホーム登録事業者数は166事業者。
令和3月4月1日現在の自立準備ホーム登録事業者数は、447事業者となっており、制度開始から281事業者が増加している。
自立準備ホームの委託実人員については、制度開始時の平成23年度は799人。
令和2(2020)年度の委託実人員は1,719人となっており、制度開始から920人増加している。
自立準備ホーム登録事業者数も、活用している人も、増加しており、明確にニーズがあることがわかる。

日本自立準備ホーム協議会は、再非行・再犯を減らし、犯罪被害に遭う人を増やさない。
犯罪被害に遭う人を増やさないために、罪を犯した人が、住まいが無くて頼れる人もいない時に、安心できる住まいと犯罪性のない信頼できる人との繋がりを届けていきたい。
罪を犯した人が二度と罪を犯さずに生き直していくためには、安心できる住まいと犯罪性のない信頼できる人との繋がりが必要。
被害者は自分が受けた被害を忘れたくても忘れることができない。償いとは、元に戻すこと。元に戻すことは不可能なので、償いとは、不可能なこと。罪を犯すとは、取り返しのつかないこと。
だから、再非行・再犯を減らし、犯罪被害に遭う人を増やさない。

最後になりましたが、この度、日本自立準備ホーム協議会の代表に就任させていただく私は、少年院に入ったことのある、元非行少年であり、元犯罪者です。
自分自身の過去を明らかにせずに、代表としてのあいさつ文を終える訳にはいきませんので、お気持ちを害される方も多いと思いますが、ご容赦ください。
被害者の方々、被害者の周りの方々、ご迷惑をお掛けした方々には、心よりお詫び申し上げます。
私が、再非行・再犯を減らす活動をおこない、この度の役に就かせていただくことは、自分自身の償いとは当然のごとく切り離して考えております。
償いとは、不可能なことと書かせていただきましたが、命が尽きるまで罪の償いと向き合い続けていくことを固く決めております。
そして、再非行・再犯を減らす活動を命が尽きるまで継続していくことも固く決めております。

日本自立準備ホーム協議会は、自立準備ホームを必要としている人の声を待つのではなく、聴きにいく。

日本自立準備ホーム協議会リーフレット(R6(2024)年1月作成)

メッセージ(協議会設立にあたって)

宮田 祐良
(前法務省保護局長)

日本自立準備ホーム協議会の設立を心からお祝い申し上げます。

あの町この町 日が暮れる 日が暮れる
今来たこの道 帰りゃんせ 帰りゃんせ

野口雨情の童謡「あの町この町」です。子どもが夕焼けの中を我が家に帰ります。夜のとばりに心細さや不安を覚えた子どもが家族が待っている家を目指すのは当然です。ただ「待つ身になっても待たせる身になるな」といいますから、待たせていると思わせないように待たなければならないと考えれば、待つこともそう単純ではありません。家に帰れば子どもは、その日あった出来事を話し、家族はその話を飽きずに聞く。飽きずに聞くとは、待つことと同じ意味です。何故飽きずに聞くことができるか。それは話に興味があるのではなく(勿論あっても良いが)、話している子に関心があるからです。

刑務所出所者等が自立更生には、生活の基盤たる住居が必要です。ただそこが良い居場所となるためには、待っている誰かの存在も大事です。それは刑務所出所者に限られるものでは、ないでしょう。

自立準備ホームは、刑務所出所者等の受入れ先を確保するため、平成23年にスタートした「緊急的住居確保・自立支援対策」において登録事業者が管理する宿泊場所として生まれました。現在では、ホームレス支援、若年者生活支援をされている法人など、実に多種・多様な業種からの参入を得て、多くの刑務所出所者等の自立を支援いただいています。それぞれがその分野のプロフェッショナルであり、積み重ねて来られた実績や知見を生かし、高齢、障害、ホームレス、依存症、被虐待など複雑・多様化する利用者のニーズに対応し、保護を必要とする人に寄り添い、見守り、ときには厳しく、彼らの社会復帰に大きな役割を果たしていただいており、改めて深く御礼を申し上げます。

設立される協議会は、自立準備ホームの連携の強化や情報共有、研鑽などが目的とお聞きしました。立ち直ろうとする人たちを包摂するコミュニティが求められる今、各地で培ってきた専門性がさらに活かされ、利用者の多様性に対応することなどにより、支援を必要としている多くの人が、居場所を見い出し支えられて社会復帰の道を踏み出していくものと思います。

法務省では、制度の充実発展をはじめ効果的な諸施策の実施に取り組んで参ります。引続き各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。

酒井 邦彦
(元広島高等検察庁検事長、特定非営利活動法人食べて語ろう会顧問)

自立準備ホームで生活する人たちは、家族のもとに帰ることができない少年院の出院者や薬物使用を繰り返す、国の手にもあまる最も「困った」人たちで、そんな人たちと寄り添い伴走している運営者の皆様は、悩みながら手探りで日々進んでおられると思います。

そんな伴走者を伴走するのが全国協議会です。僕は、子ども虐待防止、視覚障害者のサポート、スポーツを通じての社会的インクルージョンなどの活動をしていますが、社会の目が最も冷たいのは罪を犯した人に対してです。

逆に言えば、この人たちが周りをきょろきょろ見回すこともなく、堂々と自信をもって生きていくことができるような暖かい社会を創ることは、誰にとっても優しい社会になるということです。

国の豊かさは、これからはGDPでなく、社会の優しさで計られるようになるはずです。そんなheartfulな社会を創っている皆様を応援します。From the bottom of my heart!

吉永 みち子
(エッセイスト、公営財団法人民間放送教育協会会長)

一度社会で生きていく足場を失った人は、もう一度確かな足場を構築できないと生きていくのが厳しくなります。社会で再び生きていくために、家族や友人など支えてくれる足場のない人たちが再び歩き出すための初動を支えることは、本人のためでもあり社会のためにも必要なことだと思います。

そのために様々な地域で様々な人たちが様々な形で取り組んで下さっていますが、抱える課題は多岐にわたり、常に新たな問題に直面しながら歯を食いしばって活動を維持して下さっているのが現状でもあります。それぞれが個々で立ち向かうだけでなく、個々が縦横に繋がれた情報を共有化し、試練の中で蓄えた知恵や方法を学び合うこともできます。

それぞれの力を結び合うことができたら、きっとより強くよりしなやかに目指す道を共に歩けるのではないか・・日本自立準備ホーム協議会は、支援する側と支援される側の双方の笑顔のための拠り所を目指せたらと願っています。

今福 章二
(元法務省保護局長、特定非営利活動法人日本BBS連盟会長)

居場所を未来につなげるために

立ち直りには居場所が必要です。人とのつながりを肌で感じられ、安全で、自分も人も大切にできる場所がなくてはなりません。刑務所や少年院を出た人たちにとって、地域で「お帰り」と迎えてくれ、再出発に寄り添ってくれる最後の拠り所は、これまで民間の更生保護施設が一身に担ってきました。

それを補完する仕組みとして10年前に始まった自立準備ホームは、その後、登録数や保護実績が年々拡大し、また、保護の範囲を広げ、処遇内容も多種多様なホームが加わり、当初の予想をはるかに超えて、今や無視できない存在となっています。一方、個々のホームは、必ずしも実施体制が強固とは言えず、横連携による助け合いや、多様なニーズに対応するためのネットワーク化の課題に直面しています。

まさにコロナ禍で人々や社会が疲弊する中、個々のホームをつなげ、支え合い、そして発信し社会全体を巻き込んでいこうとする全国組織がスタートすることは、居場所を未来につなげる大きな力となります。心から歓迎し、大きく発展することを期待しています。

山田 憲児
(更生保護法人更新会常務理事、保護司)

日本の更生保護は、官民協働体制を特色としています。そして、民の立場にある保護司、更生保護施設、更生保護女性会、BBS、協力雇用主等はすべて全国組織を結成しています。平成23年度に誕生した自立準備ホームだけが全国組織を持っていませんでした。

この度、自立準備ホームの全国組織が設立されることは大変意義のあることで、よろこばしく思います。

焦らず、構えず、気張らず、肩の力を抜いてスタートしてください。

そして情報を共有し、スタッフの力量を高めることに心がけ、財政的基盤の強化に資することを考えるなどして、自立準備ホームの発展に寄与して、一人でも多くの生きづらさを抱えた人に寄り添うことができる組織にしてください。

稲川 龍也
(高橋綜合法律事務所弁護士、特定非営利活動法人食べて語ろう会顧問)

この度、日本自立準備ホーム協議会が発足されることを心より歓迎します。

再犯防止や非行防止で一番重要なことは社会の中に居場所と出番を作ることだと言われております。特に、住居の確保は個人の尊厳を保ち社会から信用されて暮らしていくための生活の基盤そのもので、これなしでは出番も見いだすことができません。

自立準備ホーム制度が導入されて10年経過し、全国で自立準備ホームを運営する事業者はそれぞれ地域社会と連携しつつ、様々な工夫を凝らしながら受刑者などの社会復帰を支援する居場所の提供に取り組んできたことは承知していますが、それぞれの組織が単体で事業を運営して行くにはあまりに大きな課題があり限界があると思います。その意味で、全国の多くの自立準備ホームが結束して協議会を設立し、それぞれがこの10年間培ってきたノウハウや問題点を共有していくことは非常に重要で意義があることです。

コロナパンデミックや経済格差の拡大など取り巻く環境は厳しいものがありますが、全国の英知や実践例を結集して、より充実した居場所の提供を推進し再犯防止に寄与できることを心より期待しています。

中本 忠子
(特定非営利活動法人食べて語ろう会理事長)

広島市で40年前に再非行防止のため青少年たちに食事提供をする中で、空腹、孤独の解消と居場所づくりの3つが大切と実感し、現在、食事提供、学習支援、依存症の勉強会などの青少年の個々の課題に寄り添い支援活動をしています。

こうした活動の中で、髙坂さん、野田さんたちと巡り合い、全国再非行防止ネットワーク協議会で共に活動し、新たな活動である「自立準備ホーム」を整備し、帰住先に困っている青少年たちの支援が格段に進みました。

この自立準備ホームは、本会の活動理念『家庭環境に恵まれない青少年たちを支援し、再非行防止、再犯防止を進める』を実現する大切な機能であり、家族的な運営も青少年たちに寄り添うという意味で居場所づくりに貢献していると思います。

当所、愛知県、大阪府、広島県の3つの地域でスタートした自立準備ホームの連携が、全国組織を設立することにより、全国の自立準備ホームとの相互連携が可能となり、さらに多くの青少年達の居場所の選択肢が増え、社会復帰の足掛かりとなることが素晴らしいと思います。ご一緒に頑張りましょう。

野田 詠氏
(特定非営利活動法人チェンジングライフ理事長)

自立準備ホームの全国協議会が発足することにより、犯罪・非行からの離脱を心から願っている出所(院)者の方々の「住まい」と「再出発」の「場」の選択肢が、少しずつでも、拡がっていくことを希望いたしております。

政府の再犯防止に向けた総合対策で謳われた、社会における「居場所」と「出番」の創出。一事業者として、地域の中で、出所(院)者の方々と寄り添う中で、もう一つ、大切で必要なキーワードがあるのではないかと、思わされてきました。それは、対象者当人の「居心地良さ」の確保です。

「日本自立準備ホーム協議会」立ち上げメンバーの皆様をはじめ、日々現場で悩みながら戦っておられる、全国の事業者の皆様方と、この全国協議会を創り上げていくことで、孤立化や社会不適応などに起因する再犯の減少、また若者の未来がその生まれ育った環境に左右されない支援体制の強化・構築、そして、安全・安心な地域社会の実現を目指して、共に歩みを進めて行けましたら幸いに存じます。

そのために、皆様からのご支援、ご指導、ご協力を賜れますよう、なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。 

千葉 龍一
(株式会社生き直し社長)

自立準備ホーム制度ができてから10年間、自立準備ホームは各々がその特徴を生かして活動をしてきました。

しかし、各自立準備ホームが他の自立準備ホームと連携することなく活動を行ってきたので、出所(院)者の方々の再出発の芽を摘んでしまった可能性もあります。

相互に自立準備ホームが連携していれば、自身の自立準備ホームでの再出発は不可能でも、他の自立準備ホームなら再出発ができる可能性があったり、他の自立準備ホームのやり方なら再出発することが可能な場合があったかもしれません。

あくまで主役は生き直す出所(院)者の方々であり、彼ら彼女らが輝ける場を作っていくのが、場を提供する私たちの使命であると思っています。そのためには、各々が連携し各自の知識を持ちより研鑽することで、更生を願う出所(院)者の方々にとってより生き直す「場」を提供することができるのではないかと考えております。

生き直す人が笑って暮らせる社会へと変えていくためには、一人の力ではなく皆さまの力が必要だと考えております。「反省はひとりでできるが、更生はひとりではできない」どんな人でも生き直せる社会を目指して皆で協力して、少しでも多くの人が輝ける社会を創っていきましょう。

長谷川 正光
(特定非営利活動法人自立支援センターみんなの家理事)

40年間、法務省に勤務し、更生保護行政に携わってきました。

退職後、当時の保護観察所長に勧められ保護司を拝命し、所属保護区内に保護司が設立した自立準備ホーム「みんなの家」があることを知りました。

施設の厳しい経営面の実状や難しい被保護者の処遇などのお話を聞くうちに、理事を引き受けることとなりサポートをしていたところ、全国再非行防止ネットワーク協議会の髙坂朝人代表から、自立準備ホームの全国組織設立準備会メンバーに加わって欲しいとの要請を受けました。

髙坂代表とは、私が日本BBS連盟の事務局に勤務していたころ、当時、BBS会員であった髙坂さんと知り合い、BBSの講師を引き受けていただいたり、上京した際には、何度か飲食を共にしていました。そこで微力ながらお役に立てればとの思いから設立メンバーに加わりました。

全国には約430の自立準備ホームがあります。その規模、運営、経営状況もまちまちです。でも目的は同じです。全国組織化されることにより、自立準備ホーム相互の連携が図られ、経営の安定化、処遇能力の向上に繋がれば幸いです。よろしくお願いします。

稲葉 保
(元近畿地方更生保護委員会委員長)

私は、法務省保護局、中国地方更生保護委員会の勤務を通じ、中本忠子さん(ばっちゃん)のお人柄と活動に魅せられ、NPO法人「食べて語ろう会」の正会員となり、現在に至っています。

広島で問題行動を起こした少年たちを生活する場所、関わる人たちなど今までとは異なるより良い環境でやり直させたいとの思いから、同じ志を持ち、少年たちの立ち直り支援に取り組んでいる大阪の野田さん、名古屋の髙坂さんが協議、実践されたことをきっかけに、更にネットワークを拡げようとの思いが、今回の全国協議会の立ち上げにつながったと理解しています。

コロナ禍の中、生きづらさを抱えながら、生きている人は、犯罪をした人や非行のある少年だけではない。「人はみな 生かされて 生きてゆく」(更生保護制度施行50周年時制定のメッセージ)の思いを胸に、全ての人が支え、支えられながら、誰一人取り残さず、一緒に生きていけるよう歩みを進めたいと思います。

多くの方々の御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。

中島 学
(福山大学人間文化学部教授、特定非営利活動法人食べて語ろう会顧問)

少年院に勤務していた経験から、それは本人自身が約束を破ったり、多くの人に迷惑をかけてきた結果であるからかもしれませんが、保護者等との関係が希薄・断絶していて誰からの面会や手紙のやり取りもなく、退院後の帰る先がなかなか決まらないという少年らに何人も出会ってきました。

施設職員としてはできるだけの支援をしてきたつもりですが、漫然と収容期間が延びていくことへの申し訳なさといった思いを持ち続けています。

今回、その活動の充実・発展を進めていこうという趣旨から、それぞれの地域で活動されている自立準備ホームの皆さんが一つの組織としてまとまる全国組織が立ち上がりました。

『早く僕を見つけて欲しかった。』と司法と福祉の狭間に落ちかけた青年の声をはじめとする当事者自身の声をしっかりと聴きつつ、一人ひとりにあった居場所が見いだせていけるように、そして社会における更生の取組がさらに進展していくよう、皆さまと共に伴走していきたいと願っております。

岡邊 健
(京都大学大学院教育学研究科教授)

私は以前「再非行の危険因子と保護因子」という論稿を発表したことがあります(『青少年問題』639号所収、2010年)。警察に検挙された中学校2年生の少年たちが、その後再非行に至ってしまうかどうかを追跡した研究です。

わかったことのひとつは、少年の住んでいる地域で、大人による子どもたちへの関わりが強いほど、再非行に進みにくいということでした。中2段階ですでに非行歴を持っているような場合には、再非行が生じやすいのですが、そのような場合でも、友人のなかに「まじめでみんなに信頼されている人」がある程度含まれていれば、再非行に至る確率は下がるということもわかりました。

素敵な大人や信頼できる仲間と出会い、彼らとのつながりを維持することが、非行から離れるために重要なのは明らかでしょう。

そして、自立準備ホームに携わる方々の日々の実践は、このような出会いの機会を確実に広げていると思います。全国をカバーする協議会の発足を契機に、この取組みがますます深化・発展していくことを願ってやみません。

意義・背景

<全国組織化の意義>

法務省保護局及び全国の保護観察所の協力を得て、令和2年5月に全国411の自立準備ホーム登録事業者に対して、自立準備ホーム運営に関するアンケート調査を実施しました。その内、237の事業者から回答がありました。

アンケート調査から二つのことが明らかとなりました。その一つ目は、それぞれの現場では新たな対応や改善策を必要とする課題が山積していること、二つ目は登録事業者による全国組織設立の必要性と期待です。全国組織を設立した場合「参加する」との回答が、111事業者からありました。

全国組織化する意義は、以下のとおりです。
・事業所単独では解決できない事であっても、事業者同士の交流により解決に導くことが見込まれる
・情報の共有化や制度を知ることにより、事業運営が効率化できる
・利用者の処遇改善を図るうえで必要な関係機関との連携を強化できる
・限られた人材の中で事業運営のために不可欠な職員の処遇能力の向上が期待できる
・利用者が原因のある施設・備品等の損害に対する保険制度の創設・利用が期待できる
・自立準備ホーム制度の普及啓発及び事業に関する情報を広く発信することが可能となる

<全国組織化の背景>

行き場のない刑務所出所者等の帰住先・定住先を確保するため法務省の施策として、平成23年度に「緊急的住居確保・自立支援対策」が開始されました。この施策は、NPO法人や社会福祉法人等が管理する施設の空きベッド等を活用するもので、施設は自立準備ホームと呼ばれます。自立準備ホームはあらかじめ保護観察所に登録されており、保護が必要なケースについて、保護観察所から宿泊場所の供与と生活指導のほか、必要に応じて食事の給与が委託されます。

適当な帰住先のない満期釈放者の数は、平成21(2009)年の時点で約6,700人でした。同年の満期釈放者の総数15,324人のうち43.8%を占めています。更生保護施設だけでこれらの人を受入れることには限界があり、自立準備ホーム制度の普及により、これらの人が円滑に社会復帰できる環境を広げることができると考えます。とはいえ、一事業者でできることには限りがあるのも事実です。自立準備ホーム事業者の全国組織を設けるには、上記のような多くの意義があるとの認識に至りました。このような背景から、令和4(2022)年3月、全国組織「日本自立準備ホーム協議会」は設立されることとなりました。

日本自立準備ホーム協議会リーフレット(R6(2024)年1月作成)

基本理念

罪を犯したすべての人は、自分の過去を変えることはできなくても、自分と未来を変えることはできます。しかし一人で変えることはできません。犯罪性のない、その人にとって信頼できる人との繋がりが必要です。

言い換えると、罪を犯したすべての人は、信頼できる人との関係性があれば、再非行・再犯することなく、被害者も生むことなく、生き直していくことができます。

日本自立準備ホーム協議会は、次の3つの理念のもと、罪を犯したすべての人に対して寄り添いながら支援します。

孤独と空腹を無くし、居場所をつくる。

仲間と寄り添い、信頼の貯金を増やす。

自分と未来は変えられる。でも一人では変えられない。

また、私たちは、次の3つのミッションを持っています。
①罪を犯した人の住まいの選択肢を増やす。
②自立準備ホーム同士と関係機関との連携を強化する。
③自立準備ホームの処遇能力を向上する。

自分の大切な家族や、友人が、犯罪の被害者になることは、人生を狂わされた悲しみを考えると言葉に尽くしがたいものがあります。一方、加害者になることは、自分の家族や身近な人に辛い思いをさせ不幸を強いることになります。

私たちは、誰もが不幸に陥ることがないよう再非行と再犯を減らしていきます。

そのために、上記の理念を抱き続け、ミッションを達成していきます。

事業内容

「再犯、再非行を防止するための環境づくりには、全国的な連携の仕組みが不可欠である」との考えのもと、日本自立準備ホーム協議会は設立されました。協議会は、自立準備ホーム事業者同士の連携と共に、更生保護関係機関との連携、緊密な連絡調整を強化することで、「各団体の強みを生かした支援、対象者の特性に応じた支援の展開」を目指します。また、人材育成研修や情報の共有化等による「学びの場の確保」によって「処遇の質の向上」を図ります。また、各事業者が息の長い支援に取り組む体制を支えるための「損害保険制度の確立」を目指します。これらによって、地域社会において、犯罪の被害者、加害者になる人を減らし、笑顔を増やしていけると確信しています。

日本自立準備ホーム協議会リーフレット(R6(2024)年1月作成)

加盟団体

九州エリア
都道府県 事業者名 施設名
福岡 (一社)ふくしあ 自立準備ホーム サングッド
福岡 (一社)ふくしあ 自立準備ホーム 宅老所 サングッド
福岡 ㈱RECOVERY リカバリー準備ホーム VIPABC
福岡 ㈱NiCO
福岡 ㈱インプルーブ
長崎 ㈱ブレインズ 自立準備ホーム ブレインズ
鹿児島 NPO法人夢空間とんぼ 地域活動支援センター とんぼ
鹿児島 (社福)更生会 自立準備ホーム きぼう
沖縄 ワンネス財団沖縄GARDEN 浦添ハウス
沖縄 ワンネス財団沖縄GARDEN 首里ハウス
沖縄 ワンネス財団沖縄GARDEN 大里ハウス
沖縄 ワンネス財団沖縄GARDEN 八重瀬ハウス